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一年の独学で予備試験を超上位合格した理由、完全解説

令和3年 予備試験論文 民事訴訟法 設問1

出題の意図
民法改正と民事訴訟法が最も熱くリンクするのが代位行使と独立当事者参加に関する論点であり、これはリーガルクエストでも触れられていたし、注目を浴びていたテーマだったといえる。この論点の面白いところが、結論が完全に定まっていないことにある。肯定派と否定派が真っ二つに割れている状況にあるといえる。このような背景から、さすがに学説でも決着がついていない新しい論点を予備試験では出しにくいのではないかと個人的には考えていたが、見事に正面から出題してきた。試験委員は覚悟を決めたのだ。結論はどっちでもいい、思考過程を見せてくれ、これが試験委員からのメッセージである。

解答筋
問題は共同訴訟参加の是非、独立当事者参加の是非、の二つに分かれている。ここでいきなり共同訴訟参加について論じてはいけない。共同訴訟参加には論点らしき論点もなく、多くの受験生は対策をしていない分野である。だから、共同訴訟参加に関する理解を試験委員は聞きたいのではない。問題のポイントは、本問のように債権者が債務者に代位して訴訟を提起したとき、債務者が債権者の当事者適格(=被担保債権の存在)を争いながら訴えに加わるにはどの手段をとるべきなのか、である。であれば共同訴訟参加と独立当事者参加を別々に論じても意味がないし、あらかじめ結論を統一する必要がある。というのは、例えば共同訴訟参加できるのであれば独立当事者参加を認める必要はないし、逆もしかりだからである。

1共同訴訟参加〇独立当事者参加〇
2共同訴訟参加〇独立当事者参加×
3共同訴訟参加×独立当事者参加〇
4共同訴訟参加×独立当事者参加×

場合分けするとこうなる。このうち、1と4は論外である。1は先に述べたとおりであり、4は明らかに債務者にとって不都合であり、仮に4で論じるとすればそのような不都合が許容されることまで論じなければならなくなる。そうすると2か3しかないのだが、結論としては3が無難であろう。これは学説の議論を踏まえないと思いつきにくいかもしれないが、実は共同訴訟参加も独立当事者参加も両方無理があるところ、独立当事者参加のほうがまだマシだからである。それに、独立当事者参加の要件を満たしません、とすると、独立当事者参加と二重起訴という超メジャー論点に触れることができなくなる。試験戦略的には、共同訴訟参加を短く切って、独立当事者参加の論述を厚くするべきだろう。

共同訴訟参加の是非
ハードルは1債務者が当事者適格を有するか2債権者の当事者適格を争いたい債務者が債権者とともに原告に立って一緒に戦うのはおかしくないか、の2つである。一つ目のハードルについては、民法改正で債務者の取立権限が残された(423条の5)から、問題ないことを端的に指摘すればよい。二つ目については、おかしいよねということを法律的に書けばよい。ここは長々と論じるべきことではない。具体的には、共同訴訟参加した場合、必要的共同訴訟に移行し、債権者に不利な行為は無効になる(40条1項)から、当事者適格を争えなくなる、だから目的を達成できなくなる、そのようなことを書けばいいだろう。

独立当事者参加の是非
これも、1非両立性を満たすか2二重起訴に当たらないかの二点が問題になる。判例法理に厳密に従えば、1非両立性は満たさないであろう。なぜなら、債務者と債権者のそれぞれの請求は訴訟物が同じなので訴訟物レベルで両立し、しかも債務者は当事者適格を失わないこととされたので、当事者適格レベルでも両立するからである。答案には、このことを書いて、不都合性を指摘して修正すればよい。二人の請求は現実には両立しないから認めてあげてもいいよね、といった風に書けば期待に応えることはできるだろう。その次に二重起訴の論点を書く。順番に関しては逆でも問題はないだろう。ただ理屈としては要件が認められないのに二重起訴を論じるのは不自然な気がする。論じる内容は必要的共同訴訟の規定を準用するから趣旨に反しない、で足りる。お決まりの論証だ。